きほんのいいもの
ワタナベマキさん

第3話
ほっとひと息、心が安らぐ、
元気をくれるもの

手に取るたびに「いいなあ」と思えるものがあったなら、
生活の中に小さな喜びが生まれます。
そんな暮らしまわりにあるとうれしいあれこれについて、
教えていただく連載。ワタナベマキさんに伺いました。

料理家として、雑誌や書籍、イベントと多方面で活躍しているワタナベマキさん。毎日をはつらつと笑顔で過ごす、元気の源はどんなところにあるのでしょうか。
「やっぱり自分の中心にあるのは食。家族や友人とおいしいものを食べることが、何より好きです。旬のものを味わったり、外で新しい味にふれたり、そこからレシピが浮かんでくることも。そうした時間はとても大事にしています」

自宅にゲストを招いて、おもてなしをするのも大好きだというワタナベさん。みんなで食卓を囲む時に愛用しているものや、日々元気をもらっているお気に入りを教えていただきました。

1 ゲストと話が弾む、
 個性的なデミタスカップ

コーヒーは濃くて苦味のあるものが好みというワタナベさん。おやつの時間や食後のコーヒータイムには直火式のエスプレッソメーカーでエスプレッソを淹れて楽しんでいます。ゲストが来た際に使うのが、ユニークなフォルムに惹かれたというポルトガル作家のデミタスカップ。「お客様がいらした時は、ちょっとおもしろい器で出したりすると、それで話が弾んだりしますよね」。小さくて愛らしいカップはみんなの人気者です。

2 箸置きには、ひとさじの遊び心を

器は料理が映えるものをよく吟味して選びますが、小さくて冒険もしやすい箸置きは、自由に楽しく。右は、花屋さんで売っていた何かの実で「この形は使える!」と直感で購入。中央は上が上泉秀人さん、下が伊藤聡信さんの箸置き。左はなんと川辺で拾ってきた小石。「平たくてすべすべのものは箸がのせやすいんです。箸置きは遊べるから楽しい」とにっこり。自分のひらめきに従って集めた箸置きは、コーディネートの小さな名脇役です。

3 少しずつ集めた、大好きな台湾茶のセット

お茶の中でも特に好きなのが、台湾茶。現地でそのおいしさに魅了されて以来、自宅でも普段からよく飲んでいます。一番好きなのは梨山茶。うっとりするような香りと上品な甘みは、リフレッシュにぴったりです。茶器は少しずつ買い集めたもので、急須と白い茶杯は岡田直人さん、茶葉入れは伊藤聡信さん、黒銀彩の茶杯は安藤雅信さん、丸盆は骨董品。「台湾では茶藝の美しさにも惹かれ、淹れ方を習いました。誰か来た時にはこの道具で淹れて飲んでいただくのが楽しみです」

4 お気に入りの花器に、花を絶やさず

左は愛媛の窯元で出会ったピッチャー。和の器ですが、洋風の花にも合う雰囲気に惹かれました。左は一輪挿しとして使っている伊藤環さんのオイルポット。佇まいが美しく、素朴な麦の穂を飾っても絵になります。「草花があると部屋の中に気持ちのいい空気が流れる気がして。欠かさず飾っています」というワタナベさん。花生けは気負わずラフに。ピッチャーやオイルポットなど食につながる器に生けると、食卓にも自然と溶け込みます。

どんなに忙しくても、洗濯をして掃除をして、ごはんを作ってと、日々の暮らしが中心にあって、その上で仕事に集中する時間を作っているのが、ワタナベさんの毎日です。朝と夕方の仕事の区切りには、大好きな台湾茶でほっとひと息ついて気持ちを切り替えたり、目の届く場所に草花を飾ったり、自分が持ってうれしい道具を使ったり。「そうやって自分にお楽しみをあげることも、よしっ!と頑張るためには大事なこと」と語ります。
好きなものを側におくこと、おいしいごはんをみんなで囲むこと。自分で蒔く楽しみの種が、次の仕事へのパワーの源となっています。

写真:西希 文:加藤奈津子

<プロフィール>

ワタナベマキ

料理家。季節感を大切にした野菜たっぷりの体に優しいごはんや、手をかけながらシンプルに楽しむ保存食など、今の暮らしに合ったセンスの光るレシピが人気。旦那さんと小学5年生の息子さんの3人暮らし。著書に『ワタナベマキのおいしい仕組み:少ない材料・シンプル調理でも絶品になる!味つけのルール 』(日本文芸社)、「アジアのサラダ」(主婦と生活社)など多数。

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