十一月

グランエックス12ヶ月
中川たまさん

10月も半ばを過ぎ、木枯らしの気配がしてくると、
近所に住む友人たちから柿のおすそ分けが回ってきます。
11月に入るとキッチンにはいつもどこかに柿があって、
早く食べてくれないと熟してしまうよと急かします。
そんなときは、思いきって柿をサラダやおやつに。
きっと柿の新しいおいしさを発見できると思います。

軒先にずらりと吊るされた干し柿。
東京でそんな風景を見ることは少なくなりましたが、
秋が深まる頃、スーパーにつやつやした柿が並ぶと、
ああ、もうすぐ冬が来るのだなあと思います。

神奈川県の海沿いの街に暮らすようになってからは、
友人たちが、こぞって自分の庭になった柿を
おすそ分けしてくれるようになりました。

毎日食べても、なくなる頃にまたもらってしまうので、
家族もだんだん飽きてきて、見て見ぬふりをするように。
そのまま食べる以外に柿を味わう方法はないものか。
柿をお料理に使い始めたのはそんなきっかけからです。

柿のオレンジ、ザクロのルビー色が美しいサラダ。とびきりおいしいオリーブオイルを使って。

甘いけれど、そこまで味に強い主張のない柿。
「ぼやぼやした味」という人もいますが、
それは食材や調味料と調和しやすいともいえます。

なにより魅力なのは、滑らかな舌触り。
熟しきる少し前、歯ごたえとねっとりしたやわらかさが
共存している頃は、サラダにしたらおいしいのでは?

酸味や塩気、ハーブの香りもすんなりと受け止め、
ほんのりとした甘みでまとめてくれる包容力。
意外にも柿は、お料理しやすい果実だったのです。

ねっとり、ぷちぷち。
食感たのしい、柿のサラダ

柿をサラダにしてみよう、と思い立ったとき、
まず活かしたいと思ったのはその食感です。
ねっとりした、なんともいえず滑らかな舌触り。
それをより引き立たせるために、
あえて真逆の元気な食感を持つ食材を加えよう。

思いついたのは、同じく秋の果実であるザクロ。
ぷちっと弾ける食感がおもしろく、
味も柿とは真逆のはっきりした酸味を持っています。

さらに、柿のほんのりした甘みを殺さないよう、
塩は控えめにして、スモークサーモンをプラス。
サーモンと柿を一緒に食べたとき、
口の中で塩気と甘みが調和するしかけです。

薄く皮をむくにはピーラーを使って。握っても崩れない、熟す前の果実がサラダ向きです。

おもしろいのは、一皿のうちでも、
食べる部分によって味や印象が変わること。
ザクロと柿なら柿のにゅるっとした食感が際立ち、
サーモンと柿を一緒に食べれば柿の甘さがひときわ感じられます。

全部一緒に食べたら…
ねっとり、ぷちぷち、甘い、しょっぱい、すっぱい。
すべての要素が一緒になって、
なんだかこれまでにない楽しいサラダに。
見た目にも秋らしい、美しい一皿になりました。

爽やかな酸味のザクロは、ぼんやりした柿の甘さを引き出してくれる好対照な果実。

柿とスモークサーモンのサラダはこんなふうに

[材料]

材料(作りやすい分量)
柿(種無し)
2個(320g)
スモークサーモン(スライス)
6枚(72g)
ディル
少々
かぼす
少々(あれば)
A(ドレッシング)
ザクロの実
30g
白ワインビネガー
大さじ1/2(7.5g)
オリーブオイル
大さじ1(12g)
少々

[作り方]

  1. Aの材料をよく混ぜ合わせる。
  2. 柿は皮をむき、食べやすい大きさに切る。
  3. 器に2の柿、スモークサーモンを盛り、1のドレッシングをまわしかける。ちぎったディル、すりおろしたカボスの皮をちらす。

噛めば噛むほど甘くなる
セミドライの甘柿。

小さい頃、田舎の祖母がたくさん柿を送ってくれました。
なかには渋柿もあって、それらは軒先に吊るして干し柿に。
寒さが厳しくなる頃に食べごろを迎える干し柿は甘くて、
ねっとりしていて、おいしかったな。

近頃では都会で渋柿を手に入れるのは難しくなって、
ならば甘柿を干してみようとチャレンジしたものの、
鳥やリスがその甘い香りに気づかないわけがなく。干したそばから食べられてしまうのでした。

そこで編み出したのが、オーブンで作るセミドライ甘柿。
皮をむいて薄くスライスした甘柿を100度に温めたオーブンに1時間ほど。

種無し柿はスライスすると星形が。ドライにしたときにもきれいに模様が残ります。

表面は乾燥しているけれど、噛むとしっとり。
干し柿に通ずる食感で、これはおいしい。
そのままお茶うけに食べてもいいですが、
チョコレートやクリームチーズを乗せて食べると、
柿のしみじみとした甘さが引き立ちます。

柿があまり好きではない夫もこれは好きで、
もっぱらワインのおとも。
噛めば噛むほどじんわり甘さが広がるセミドライ柿は、
大人のための上品なおやつなのです。

チョコレート、チーズ、ナッツなどと一緒に。おやつになっても柿の包容力は健在です。

料理:中川たま 撮影:野川かさね 文:小林百合子

<プロフィール>

中川たま
(なかがわたま)

料理家。神奈川県・逗子で夫と高校生の娘と暮らす。自然食品店勤務後、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て独立。伝統を受け継ぎながら今の暮らしに寄り添い、季節のエッセンスを加えた手仕事の提案を行う。著書に『暦の手仕事』(日本文芸社)など。

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