二月 レモン

グランエックス12ヶ月
中川たまさん

2月、いちだんと寒さが厳しくなる頃、
近所の商店でレモンを見つけるとうれしくなります。
私が暮らす逗子は関東でも比較的温暖なこともあり、
柑橘類の栽培がさかんです。

国産のものが手に入りにくいレモンですが、
この季節は特別。地元でとれたばかりのレモンを
たっぷり使って料理やお菓子作りを楽しみます。

今回は無農薬でレモンを栽培する農家さんを訪ね、
フレッシュなレモンを使った料理をご紹介します。

地中海のような風景のレモン畑が広がる
海に面した斜面にあるオレンジフローラル ファーム。地中海のような風景。

レモンの最大の魅力は
香りを味わえること。

逗子から電車で1時間。海と山に囲まれた真鶴町は、
柑橘類の栽培がさかんな土地ですが、
なかでもオレンジフローラル ファームは
完全無農薬でレモンを栽培する数少ない農園です。

海に面した斜面に植えられたレモンの木。
たわわに実っていますが、ここまで育てるには
大変な苦労があります。
無農薬でレモンを育てるのは害虫との戦い。
オーナーさんは害虫を見つけるとひとつ
ひとつ歯ブラシで取り除くそうです。

お手本にとオーナーさんがはさみを入れてくれたレモン。
ぱちんと枝が切れた瞬間に、爽やかな香りが届きます。
「レモンは香りを楽しむ果実なんです。農薬を使うと
皮を使えなくなりますから、それじゃ台無しでしょう」

レモンの香りが一番いいのは、収穫してすぐのとき。
熱を入れすぎると香りが飛んでしまうから
蒸し料理の最後の最後に皮ごと加えると、
料理がレモンの香りをまとって
とてもおいしいと教えてもらいました。

収穫したばかりのレモン
枝から切った瞬間にはじける清々しい香り。収穫した人だけの特権です。

収穫を終えてひとやすみしていると、
とったばかりのレモンを切って湯を注いだ
とてもシンプルなレモネードを出してくださいました。

湯気とともに立ち上るすがすがしい香り。
「香りを味わう」というのはこういうことなんだ。
そう、しみじみと思いました。

いつもお皿のすみっこにあって、
料理を引き立たせる脇役と思われがちなレモン。
いやいや、それは勝手な思い込みで、
じつはとっても華があって、主役を張れる食材なのでは?

香りをめいっぱい楽しむ料理ってどんなだろう。
とれたてレモンが発する清涼な香りに包まれていると、
いろいろなアイデアが浮かんでくるのでした。

ずっしりと重いレモンがおいしいレモン
おいしいレモンはずっしりと重く、皮にハリがあるものだそう。

レモンの香りと風味を
旬の牡蠣にまとわせて。

収穫して持ち帰ったバスケットいっぱいのレモン。
一晩キッチンに置いておいたら、
家の空気にほんのりその香りが移っていました。

レモンがある季節、朝まず作るのはホットレモネード。
我が家ではぎゅっと絞った果汁とスライスを入れ、
少しだけはちみつを加えるのが定番。

ちょっと風邪っぽいなと思うときはしょうがのスライス、
ローズマリーなどのハーブを入れると、
より香り豊かで、爽やかな風味になります。

フレッシュレモンで作るホットレモネード
ホットレモネードもフレッシュなレモンで作るといちだんとおいしい。

お料理はというと、農園で伺ったお話をヒントに、
今が旬の牡蠣にレモンの香りをまとわせる
蒸し物を作ることに。

牡蠣のうまみとレモンの香りが凝縮された蒸し汁も
あますことなく楽しめるよう、牡蠣の下には
たっぷりのねぎを敷いておきます。

ねぎ、牡蠣の順に重ねたら、最後に牡蠣が見えなくなるくらい
たっぷりのレモンスライスをのせて、せいろへ。
10分ほどで蒸しあがります。

このお料理、もちろんおいしいのですが、
ハイライトはせいろを開ける瞬間です。
湯気とともにふわふわと上がるレモンの香り。
もうそれだけで白ワインの一杯でも飲めてしまいそう。

ふっくらと蒸しあがった牡蠣には
角のとれた酸味と爽やかな香りが移って、
牡蠣の甘さを上手に引き立ててくれています。

牡蠣をレモンと一緒に蒸し上げます。
湯気と一緒にレモンの香りを楽しんで。蒸し過ぎると苦味が出るので注意。

デザートには、ほろ苦い皮のおいしさを味わえる
レモンタルトを。生地に皮を混ぜ込むのに加え、
仕上げに削った皮をふりかけると、
より贅沢にレモンの香りを味わうことができますよ。

レモンらしい甘酸っぱさいっぱいのレモンタルト
4個分の果汁を使ったタルトは、レモンらしい甘酸っぱさを感じられます。

牡蠣とねぎのレモン蒸しはこんなふうに。

[材料]

(2人分)
レモン
1個
生牡蠣
8個
長ねぎ
1/2本
片栗粉
少々
塩・こしょう
各少々
白ワイン
大さじ1(15g)
オリーブオイル
大さじ1(12g)
旬の牡蠣にレモンをたっぷりとのせて蒸し上げます。

[作り方]

  1. 牡蠣は塩水につけてさっと洗い、水気をふき取ってから片栗粉を薄くまぶす。
  2. レモンは2/3個分ほどを薄切りにし、長ねぎは細切りにする。
  3. 皿にねぎをしき、塩・こしょう少々をふる。その上に牡蠣をのせて再度塩・こしょうをふる。
  4. 2のレモンの薄切りをのせて、その上から残りのレモンを絞る。さらに白ワイン、オリーブオイルを回しかける。
  5. 蒸気がたっぷりあがった蒸し器に入れ約10分ほど蒸す。

料理:中川たま 撮影:野川かさね 文:小林百合子 協力: オレンジフローラル ファーム(http://www.orangefloral-farm.com/)

<プロフィール>

中川たま

中川たま
(なかがわたま)

料理家。神奈川県・逗子で夫と高校生の娘と暮らす。自然食品店勤務後、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て独立。伝統を受け継ぎながら今の暮らしに寄り添い、季節のエッセンスを加えた手仕事の提案を行う。最新刊は2018年2月刊行の『季節の果実をめぐる114の愛で方、食べ方』(日本文化社)。ほか著書多数。

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