きほんのいいもの
ワタナベマキさん

第1話
丁寧にごはんを作りたくなる、
基本のうつわ

手に取るたびに「いいなあ」と思えるものがあったなら、
生活の中に小さな喜びが生まれます。
そんな暮らしまわりにあるとうれしいあれこれについて、
素敵なあの人に伺う連載です。

お話を伺ったのは、料理家のワタナベマキさん。
季節ごとの食材を使い、今の暮らしに合った等身大で体に優しいレシピを提案しています。「うつわは大好き」というワタナベさんですが、最近は以前ほど買わなくなったと話します。というのも、20~30代にいろんなものを使ってみることで、自分の好きなものがぶれずに分かるようになったから。それは、「盛り付けやすく、料理が映える、シンプルな色や形」。自分と自分の料理になじむことが大事なので、買うときはいつも、「このお皿にはこの料理をのせたい、あの料理もいいな」と思い浮かぶものを選ぶようにしています。

そんなワタナベさんが、毎日の食卓で使っているのはどんなうつわなのでしょうか? まずは、食器の基本ともいえる、飯碗、汁椀、箸について教えていただきました。

1 素朴で温かい。ごはんが引き立つ茶碗

「口が広く平たいフォルムに惹かれました」という、陶芸家・吉田次郎さんの茶碗。口が広がった形は、ごはんを盛った時に美しく見えるといいます。持ってみると非常に軽くて手になじみ、食べやすい。他にもいろいろな茶碗を持ち、気分で使い分けていますが、「和食の時は主にこれ。白米だけでなく炊き込みごはんもよく映えます」とのこと。柔らかな色合い、素朴で美しい形は、飽きることがありません。家族3人で使い、奥の小ぶりなのが息子さん用です。

2 上質な黒漆椀を、毎日の汁椀に

木地作りから漆塗りまで一貫して制作する、京都の木工芸家、佃眞吾さんの漆椀。「ひと目惚れでした。これは佃さんの大傑作ですね」としみじみ眺めるお気に入り。普段の汁椀として使っていますが、たっぷり入る深みのある形は、小さなどんぶりとしても重宝しているといいます。「存在感のある漆黒が加わると、食卓が締まります。先ほどの茶碗とこの椀を前にすると、ごはんをきちんと作ろう、丁寧にしよう、と思うんです」

3 これがベストと思える、大好きな箸

「重さ、細さなど、今の私にとってはこれがベストの箸」とワタナベさんが惚れ込んでいるのが、京都にある『市原平兵衛商店』の箸。料理のプロにも愛用者が多い、箸店の老舗です。特徴はなんといっても、箸先が極細に仕上げてあること。「先がとても細いので、小さなものでもつまみやすく、口当たりも繊細です。それでいて、すごく丈夫なのがすばらしい」。普段の家族の箸として使い、その使い心地のよさを日々実感しています。

愛用している基本のうつわは、どれも隅々にまで神経が行き届いた造形美があり、自然と丁寧な心持ちにさせてくれます。まずは1つか2つ購入し、実際に使ってみて、「これはいいな」と納得したら、家族分を買い足す。そうやって少しずつお気に入りを増やし、旦那さんや息子さんともそのよさを共有しているのが素敵でした。

次回は、朝食やおもてなしの場でも活躍する、パンにまつわるアイテムについて伺います。

写真:西希 文:加藤奈津子

<プロフィール>

ワタナベマキ

料理家。季節感を大切にした野菜たっぷりの体に優しいごはんや、手をかけながらシンプルに楽しむ保存食など、今の暮らしに合ったセンスの光るレシピが人気。旦那さんと小学5年生の息子さんの3人暮らし。著書に『ワタナベマキのおいしい仕組み:少ない材料・シンプル調理でも絶品になる!味つけのルール 』(日本文芸社)、「アジアのサラダ」(主婦と生活社)など多数。

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