あの人に聞きました
山戸ユカさん

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食べることで、わたしたちが得られるものはなんでしょう。
「おいしい!」という感動や驚き、そして家族の団らん。
そしてもうひとつ大切なことは、「健康」です。
たのしく、おいしく食べることで、体を健やかに保つ。
「食」のきほんとなるお話を、料理のプロに伺います。

山梨県北杜市でレストランDILL eat,lile.を営む
料理研究家の山戸ユカさん。2回目は健やかな食生活を送るための食材選びについてのお話を伺います。

人間の体は、土地とは切り離せないから

前回、食べ物をまるごと食べることでその栄養やエネルギーを摂る「一物全体」というお話をしました。今回は同じくマクロビオティックの根幹となる「身土不二(しんどふじ)」という考え方についてお話したいと思います。これは「人間の体と土地は切っても切り離せないもの」という意味。食の場合は「自分が暮らす土地で、そのときとれるものを食べましょう」ということです。

よく旬のものは栄養もエネルギーもたっぷりあって良い、と言われますよね。でもその旬も北海道と沖縄とでは違いますし、育つ作物の種類だって異なります。例えば私の暮らす八ヶ岳山麓ではトマトやナスなどの夏野菜が旬を迎えるのは7月頃。九州などの暖かい地域に比べると、旬は少し遅くなります。

霜が降りる寒い時期を地中で過ごした雪下にんじんの甘さと味と濃厚さは格別
霜が降りる寒い時期を地中で過ごした雪下にんじんの甘さと味と濃厚さは格別です。

トマトは体を冷やす野菜で、夏に食べるといいと言われますよね。この辺りは夏の到来が九州より遅いので、いよいよ暑いなあという真夏にトマトが旬を迎えてくれます。考えてみれば作物も人間も自然の一部です。自分が生きる土地に根ざした暮らしをするのが一番健やかだというのは、当たり前のことかもしれませんね。でも、かくいう私もそれを実感できたのは、東京からこちらへ引っ越してきてからでした。

東京にいた頃もできるだけ地元の野菜を探して買うようにはしていたのですが、周囲には便利なスーパーがありますから、いつでもなんでも手に入ります。でも、こちらへ移ってからは地元の農家さんから野菜を仕入れたり、小さな産直で買ったりするようになって。そうすると、どうしたってその季節にとれるものしか手に入らないんです。

山戸さんは地元の農家さんの畑まで足を運んで、収穫を手伝うこともしばしばだそう。
山戸さんは地元の農家さんの畑まで足を運んで、収穫を手伝うこともしばしばだそう。

旬の食材は不思議と相性がいいもの

特に冬場は野菜の数が減って寂しいなと思うこともあるんですけど、おかげで冬に旬を迎えるにんじんや大根、ブロッコリー、ほうれん草、たくさんの冬野菜の魅力を改めて知ることができました。さらに、そうした冬野菜の多くは体を温め、冬に落ちやすい免疫力を補う栄養素を持っていますから、それはもう「う〜ん、よくできる!」と唸ってしまう(笑)。

もうひとつ、旬の食材を扱うようになってからの発見は、同じ地域で同じ頃に旬を迎える食材は、たいてい相性がいいということ。旬の食材で何か料理を作ろうと思ったとき、主役の食材に何を合わせようかと悩むことがありますよね。そんなときは、合わせる食材にもぜひ旬の食材を選んでみてください。例えば今回ご紹介するキャロットラペは、この時期最も甘さを増す雪下にんじんが主役です。

にんじんは皮にも栄養とおいしさがつまっています。
にんじんは皮にも栄養とおいしさがつまっています。皮ごと使う場合は減農薬や無農薬のものが安心です。

にんじんだけでもおいしいですが、私は冬には近隣の土地で旬を迎えるりんごを加えます。りんごの爽やかな風味が入ると、にんじんの甘さと風味が際立って、華やかで存在感のある前菜に。そしてこの両者は体の免疫を保ってくれる冬のお助け食材でもあるんです。春先には春キャベツとあさりの蒸し物、冬にはレンコンとごぼうの煮物。昔からある定番のメニューですが、これらも旬の食材を組み合わせたお料理ですよね。

注意して料理本を読むと、昔からずっと作られてきた料理というのは、どれもちゃんと旬の食材同士が組み合わさっています。そんな定番レシピを参考にしつつ、食材を地元のものに変えてアレンジしてみることで、自分が暮らす土地に根ざしたお料理は意外と簡単に作れるんです。「今、この土地でおいしいものはなんだろう?」まずは小さな好奇心を持って、楽しみながら食材選びをしてみたらいいんじゃないかなと思います。

にんじんをスライサー(しりしり器)でおろすと味がなじみやすく優しい口当たりに。
しりしり器でおろすと味がなじみやすく優しい口当たりに。

山戸ユカさんのおいしくて健やかな料理②

にんじんとりんごのラペ

冬に一段と甘みを増すにんじんとりんごを合わせた爽やかなキャロットラペ。
しりしり器やチーズ用のおろし金で削ると、味がなじんでしっとりした食感になります。

にんじんとりんごのラペ

[材料]

4人分
にんじん
2本
りんご
1個
小さじ1/2(3g)
レモン汁
1/2個分(10g)
オリーブオイル
適量
スライスアーモンド
適量
イタリアンパセリ
適量
ブラックペッパー
少々

[作り方]

  1. にんじんとりんごはしりしり器(またはチーズのおろし金)を使って千切り状にすりおろす。
  2. 1に塩とレモン汁を加えてさっと混ぜる。
  3. 皿に盛り、スライスアーモンドとイタリアンパセリを飾って、上からブラックペッパーとオリーブオイルを回しかける。

料理:山戸ユカ 撮影:平野太呂 文:小林百合子

<プロフィール>

山戸ユカ

山戸ユカ(やまとゆか)

料理研究家。東京都出身。2013年に山梨県北杜市に夫ともに移住。レストランDILL eat,lifeを営む。地元産の有機野菜を使い、玄米菜食を中心とした料理を提供する。近著に『DILL EAT,LIFE. COOKING CLASS』(グラフィック社)。

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