三月 菜の花

グランエックス12ヶ月
中川たまさん

だんだんと寒さがほどける3月。
私が暮らす逗子も、晴れた日はポカポカと心地いいひだまりが感じられるようになりました。


この時期、春の訪れを宣言するように、地元の市場にはアスパラ菜やブロッコリー菜など様々な種類の菜の花が並びます。
ほろ苦い風味はまさに春の味。今回は柔らかい葉の部分はもちろん、シャキシャキとした歯ごたえの楽しい茎、可憐な花も使って、春らしいお料理をご紹介します。

菜の花を家で3日ほど水あげすると綺麗な花が咲きます
市場で買った時は緑一色でしたが、家で3日ほど水あげすると綺麗な花が咲きました。

行事や行楽の多い春は
菜の花料理でおめかし。

3月は門出の季節。卒業したり、就職したり、新しい世界へ羽ばたいていく人も多いことでしょう。我が家も娘が晴れて高校を卒業し、春からは大学生。いつもより特別な気持ちで桜を見られそうです。

この季節に欠かせないのが菜の花です。卒業や入学など、行事ごとが多い時期に旬を迎える菜の花は、その鮮やかな緑とパッと明るい花が晴れやかな食卓にぴったり。なかでも花を飾りにあしらったちらし寿司は娘の卒業祝いやお花見に何度も作ってきた思い出深い料理です。

市場やスーパーで売られている菜の花はまだつぼみが閉じた状態ですが、生花と同じように茎を水切りして数日水に挿しておくと綺麗な花を咲かせます。

菜の花と鯛を昆布締めにすることで食材の旨味を凝縮
昆布締めにすることで食材の旨味を凝縮させて。お祝いの席には鯛を使います。

私は生花を買うことはあまりないのですが、こうして菜の花をキッチンに生けて、花が咲くのを待つのはとても好きな時間。美しい花を愛でて、さらに美味しくいただけるというのが食いしん坊にはたまらないのです。

ちらし寿司といっても使う具材は菜の花と白身のお魚だけ。主役は菜の花ですから、他の具材はシンプルに、淡白なものを選んだ方が菜の花の味を感じられるんです。

白身のお刺身とさっと塩茹でした菜の花は一晩昆布締めに。余分な水分が抜けて菜の花は程よい食感に、白身は旨味が凝縮されてうんと甘みを増します。

花と木の芽を飾ったら、上品で華やかなちらし寿司に。木桶に入れて食卓に出してもいいですし、お重に詰めてお花見のお持たせにしてもとても喜ばれますよ。

花を摘んで仕上げの飾りに
花を摘んで仕上げの飾りに。今回は花が少し大きいアスパラ菜を使いました。

菜の花と鯛のちらし寿司はこんなふうに。

[材料]

(作りやすい分量)
菜の花(上半分)
1束分
鯛(刺身用)
1柵
昆布(15㎝程度)
4枚
しょうがの甘酢漬け
適量
酒、塩
少々
木の芽
少々
いりごま(白)
少々
■寿司飯
2合(360g)
昆布(10㎝角)
1枚
310mL
■A
米酢
大さじ3(45g)
砂糖
大さじ1と1/2(13.5g)
小さじ1(5g)
菜の花と鯛のちらし寿司

[作り方]

  1. 前日に昆布締めを作る。昆布は酒を含ませたペーパータオルで拭いてしめらせる。菜の花は塩少々を加えた湯でさっと茹で、ザルにあげる。
  2. 1の菜の花の水気を絞り、昆布2枚で挟んでラップをする。
  3. 昆布1枚の片面に塩をふり、削ぎ切りにした鯛をのせて塩をふる。もう1枚の昆布で挟みラップをする。
  4. 2と3を冷蔵庫で一晩ねかせる。
  5. 寿司飯を作る。米を研ぎ、昆布と水を加え30分ほど浸けておく。
  6. 昆布を入れたまま米を炊く。10分蒸らした後、混ぜ合わせた(A)を加え、切るように混ぜて冷ます。
  7. 器に寿司飯を盛っていりごまを散らし、昆布締めの菜の花、鯛としょうが、木の芽、菜の花の花をのせる。

コリコリ食感の茎は
さわやかな春パスタに。

ちらし寿司やおひたしなど、菜の花料理を作った後に残りがちな茎の部分。太くて少しすじばっているので茹でる料理には向かないかもしれませんが、実はここがとってもおいしいんです。

食感はアスパラのようで、オイルで炒めるとコリコリと心地いよい歯ごたえに。茹でるだけでは残ってしまう青臭さもソテーするとどこへやら。ほろ苦い葉の部分とはまた違って、ほんのりした甘みを感じられます。

我が家の定番は茎の部分を細かく切って使うパスタ。同じくこの時期に旬を迎えるしらすと合わせると、しらすの塩けが菜の花の甘みを引き立ててくれて絶品です。

コリコリ食感の菜の花の茎
すじが気になる茎も細かく刻めばおいしくいただけます。炒め物の具に使うのもおすすめ。

おいしく作るコツは、茎の部分をオリーブオイルでほどよく炒めること。火を入れすぎるとせっかくのコリコリとした食感がなくなってしまうので、パスタを加えて絡める時間を逆算して、少しだけ固さが残る程度に炒めます。

オイルをたっぷり使っても、食べ心地は軽く、さわやか。春の山菜は冬に溜まった毒素を排出する手助けをしてくれると聞きますが、菜の花料理を食べると、本当にそうだなあと感じます。

寒い冬を越して育った菜の花は、新しい季節を迎えるパワーをくれる存在。あふれる生命力を分けてもらって、気持ちを新たに、元気よく春を楽しみたいなと思うのです。

菜の花としらすパスタ
しらすは菜の花を炒めた後に加えてさっと火を通す程度。シンプルにペペロンチーノで。

料理/中川たま 撮影/野川かさね 文/小林百合子

<プロフィール>

中川たま

中川たま
(なかがわたま)

料理家。神奈川県・逗子で夫と高校生の娘と暮らす。自然食品店勤務後、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て独立。伝統を受け継ぎながら今の暮らしに寄り添い、季節のエッセンスを加えた手仕事の提案を行う。最新刊は2018年2月刊行の『季節の果実をめぐる114の愛で方、食べ方』(日本文化社)。ほか著書多数。

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