四月 あさり

グランエックス12ヶ月
中川たまさん

4月も半ば、季節も気持ちもすっかり春ですね。
野菜も次々と新物が出回り始めて、
近所の市場もにぎやかになってきました。

海沿いの街に暮らしてると、
野菜以外に魚介の旬にも自然と敏感になります。
この時期、とくに楽しみなのがあさり。
ぷっくりと身が肥えて、味も一段と濃くなります。
今回はあさりを主役にした春のお料理をご紹介します。

塩抜き中のアサリ
買ってきたあさりは海水に近い濃度の塩水につけて塩抜きします。

あさりの出汁を味わい尽くす
軽やかな春のおでん。

今年もあさりが美味しい時期がやってきましたね。

一般的にあさりの旬は2〜4月と9〜10月ごろ。
春と秋に産卵時期を迎えるため、その直前の時期は
身が肥えて、たっぷり栄養を蓄えているんです。

海沿いの街に暮らす私にとって、あさりは身近な食材です。
電車で少し行くと潮干狩りができる浜があって、
大潮の日に合わせて出かければ、それはもう大漁。
一時間もあれば大きなバケツが一杯になるほどです。

旬のあさりがたくさん手に入った時よく作るのが
贅沢にあさりを使って出汁をとる、おでん。

料理をする中川たまさん
春おでんの定番具材ははんぺん、たけのこ、出汁巻き卵。フルーツトマトを入れてもおいしい。

春なのにおでん?と思われるかもしれませんが、
グツグツと煮込む冬のおでんとは違って、
具材をさっと出汁にくぐらせて作る、軽やかな春仕様。
あさりを水からゆっくり煮てとった出汁は
やさしく上品で、ほんのりと潮の香りが伝わってきます。

具材はお好みですが、冬のおでんと大きく違うのは
ゆで卵ではなく、出汁巻き卵を使うこと。
あさりの美味しい出汁をたっぷり吸ってくれますし、
何より食べる途中に、おつゆが濁ってしまわないのがいい。
味も見た目も澄んだあさり出汁のおつゆは、
最後の一滴までそのおいしさを味わいたいのです。

同じくこの時期旬を迎える生わかめが手に入ったら、
さっとあさり出汁にくぐらせて加えてみてください。
潮の香りが引き立って、より春らしい風味になりますよ。

わかめは最後にさっと出汁にくぐらせる程度にして、生わかめ独特の歯ごたえを楽しみます。

春の使者、あさりと
たけのこをかき揚げに

あさりが旬を迎えるのと同じ頃、
我が家には立派な新たけのこが届きます。

たいていは大分で野菜作りをしている父からですが
今年はそれより早く、ご近所からおすそ分けがありました。
掘り出してすぐ持ってきてという土付きのたけのこ。
その日のうちに下処理をして、柔らかい部分はおでんの具に。
根元の堅い部分はとっておいて、別の料理に使います。

じつはこの根元に近い部分、油でしっかり炒めると
なんともいえないコリコリ感があって、とてもおいしい。
ニンニクと一緒にソテーしてペペロンチーノ風にしたり、
パスタの具に使っても食感のアクセントになります。

たけのことアサリのかき揚げ
火の通りを早くするため、たけのこは小さめの短冊状にカット。そら豆のにゅっとした食感との対比を楽しんで。

なかでも我が家の定番はかき揚げで、
さっと揚げることでたけのこの食感を残しつつ、
若々しい香りと甘みを衣で閉じ込めます。

この時期に作るなら、具には大粒のあさりと空豆を。
あさりの塩気と空豆の甘み、そしてたけのこの清々しい風味。
ああ、春が来たんだなあ…と、しみじみ感るひと皿です。

繊細な春の香りを消さないために大切なのは、
何といってもサクサク軽い衣です。
上手に作るコツは、薄力粉2に対して片栗粉を1入れること。
加える水はほんの少しで、ボウルで具材を混ぜたときに
お互いがやっとくっつくくらいの塩梅です。

揚がったそばから塩をふって、熱々をハフハフと。
心地いい風が吹く春の昼下がり、
ビールと一緒にいただくのもいいものです。

あさりもたけのこも、春の旬はあっという間。
この時期だけの味を逃すまいと、
夜な夜な塩抜きや下ゆでに精を出すのです。

からの開いたアサリ
あさりは火を入れすぎると身が縮むので、身を料理に使うときは殻が開いたら取り出しておきます。

春のあさり出汁おでんはこんなふうに

[材料]

(4人分)
あさり
400g~500g
薄口醤油
大さじ1(18g)
カップ5(1000mL)
【おでんの具】
各お好みの量
はんぺん 
だし巻き卵
(茹でた)たけのこ
(茹でた)わかめ
フルーツトマト
あさりのはいった春のおでん

[作り方]

  1. あさりは海水程度の濃度の塩水につけ3〜4時間砂抜きする。その後貝同士をこすりあわせて洗い、分量の水と一緒に鍋に入れる。
  2. 1の鍋を弱火にかけ、ゆっくり旨味を引き出す。貝が開いたら身が固くならないように一旦取り出す。
  3. 2に薄口醤油を加えて味を整える。食べやすい大きさに切ったはんぺん、だし巻き卵、たけのこを加えて10分ほど煮る。
  4. わかめ、トマトを加えて1〜2分さっと煮る。好みの具材と2で取り出しておいたあさりを器に盛りつけ、出汁をかける。

料理/中川たま 撮影/野川かさね 文/小林百合子

<プロフィール>

中川たま
(なかがわたま)

料理家。神奈川県・逗子で夫と高校生の娘と暮らす。自然食品店勤務後、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て独立。伝統を受け継ぎながら今の暮らしに寄り添い、季節のエッセンスを加えた手仕事の提案を行う。著書に『暦の手仕事』(日本文芸社)など。

前の記事へ

次の記事へ