九月

グランエックス12ヶ月
中川たまさん

1年間にわたってお届けしてきたこの連載。
毎月、季節ごとの食材を使ってお料理のお話をしてきました。
今月からは少しだけテーマを変えて、
私がこよなく愛するフルーツを使ったお料理を
ご紹介していきたいと思います。

果物は野菜と同じく、
食卓に季節を運んでくれる四季の使者のような存在。
そのまま食べても美味しいですが、旬の食材と合わせて
お料理すると、その魅力の幅はうんと広がります。

今月は、暑さが和らぐ頃に市場に並ぶ梨のお料理。
色々な種類の梨の特徴を生かして、
冷たい前菜と温かい主菜を作ってみました。

おいしい梨の見分け方
美味しい梨の見分け方は、軸がピンとしっかりしていて、丸く、ずっしりとした重みがあることです。

やさしい酸味を生かして
香り高い秋のサラダを

じりじりとした日差しが柔らかくなり、
ふとした瞬間に涼やかな風を感じるようになると、
市場には立派な梨が並ぶようになります。

私にとって梨は、夏の終わりを告げる果物。
ほっとしつつも、楽しかった夏が過ぎてしまうという
寂しい気持ちもあって、季節の移り変わりを実感します。

梨とひとくちに言っても、いろいろな種類があります。
日本で生産量が多いのは皮が少し茶色味を帯びている赤梨。
「幸水」や「豊水」などの品種がポピュラーですね。
ほかにも「秋月」や「新高」が人気です。

一方の青梨は綺麗な薄緑色。
「二十世紀」や「二十一世紀」などが有名です。
味の違いは時期にもよりますが、
赤梨の方がより甘みが強く、青梨は甘みと酸味が
バランスよく味わえると思います。

すだちのドレッシング
すだちは果汁をドレッシングに、皮はすりおろして仕上げにふりかけます。全体の味が引き締まり、梨の甘みが引き立ちます。

そのまま食べる分にはどちらも美味しくいただけますが、
いざお料理に使うとなるとこの微妙な違いが大切です。
例えば生のままサラダに使うなら、酸味が少しある青梨
の方がオイルとの相性がいいんです。

サラダのドレッシングにはビネガーなどの酸味を加える
ことが多いですが、梨を使えば天然の酸味が入って、
よりやさしく、フレッシュなサラダが作れます。

この時期におすすめなのは生のセロリと合わせ、
すだちとディルを仕上げに加える香り高いサラダ。
調味料はオリーブオイルと塩、ワインビネガーだけと
いたってシンプルですが、その分、梨の甘さや酸味、
そしてシャリッとした食感を存分に感じられます。

食卓に出した瞬間、ふわっと漂う爽やかな香り。
まるで今年最初に感じた秋風のようで、
新しい季節の入り口にぴったりの一皿です。

梨のサラダ
味にそこまで強い主張がない梨ですが、個性的な風味のセロリと合わせることでサラダ全体のバランスが良くなります。

甘みが強い赤梨は
お肉と合わせて主菜に

一方、強い甘さが魅力の赤梨はどうお料理するかというと、
こちらは火を入れることでより甘さを引き出します。

「梨を温めるの?」と、やや抵抗を感じてしまう方も
もしかしたらいらっしゃるかもしれませんが、
りんごも熱を入れると甘さがぐっと引き立って、
たまらなく美味しくなりますよね。あれと同じです。
合わせるのは豚肉がおすすめです。
ポークソテーにはりんごのソースがよく合いますが、
梨も豚肉との相性は抜群です。
梨のほのかな甘みが豚肉の風味をまろやかにしてくれて、
お砂糖を使うよりずっと上品な甘さに仕上がるんです。

梨_薄力粉をはたきます
薄力粉は茶漉しなどを使ってはたきます。薄力粉を薄くつけることで、軽く、カリッとした衣になります。

今回はフレッシュな梨の果汁を楽しめるよう、
衣の中に水分を閉じ込めるフリットにしてみました。
カリカリの衣をかじると、コク深い豚肉の肉汁と
甘い梨の果汁が混ざって、なんとも言えない美味しさです。

衣をカリッと仕上げるコツは冷やした炭酸水を使うこと。
ふわっとしつつも軽い食感にしたいので、卵は使いません。
主役はあくまでも梨と豚肉ということで、
衣が厚くなりすぎないように注意するのがポイントです。

食べる直前にレモンを絞ってもいいですし、
もし時間があればワインビネガーを使った
赤玉ねぎのソースを作ってみてください。
少しの酸味が加わることで梨と豚肉の甘さが際立って、
揚げ物でもさっぱりといただけます。

果物をお料理に使うのは上級者の技だと
思われがちですが、決してそんなことはありません。
野菜を扱うような感覚で、どんな食材と合わせたら
相性がいいか。どんな調理法がより美味しさを引き出せるか。
いつものお料理の延長のような感じで、
ぜひ季節のフルーツを楽しんでみてください。

外はカリカリ中はじゅわ〜
外はカリカリ、中はじゅわ〜っとした食感がたまりません。今回はロース肉を使いましたが、バラ肉だとより満足感が出ます。

梨の豚肉巻きフリットはこんなふうに

[材料]

梨の豚肉巻きフリット (8個分)
赤梨(幸水)
1/2個
豚ロース肉しゃぶしゃぶ用
8枚
揚げ油
適量
塩こしょう
各少々
薄力粉
少々
 
(A)衣
薄力粉
大さじ5
冷えた炭酸水
80cc
 
(B) 赤玉ねぎのソース
赤玉ねぎ(みじん切り)
1/4個分
白ワインビネガー
大さじ1と1/2
蜂蜜
大さじ1
七味唐辛子
少々
梨の豚肉巻きフリット

[作り方]

  1. 梨は半分に切って芯を取り除き、皮をむいて4等分にする。
  2. まな板に豚肉を広げ、塩こしょうをふる。薄力粉を薄くはたき、1の梨を巻く。表面にも薄力粉を薄くはたく。
  3. (A)をよく混ぜあわせる。
  4. 2に3をつけて中温に温めた油で衣がかりっとなるまで4~5分揚げ、油をきる。
  5. 混ぜ合わせた(B)をつけて食べる。

料理:中川たま 撮影:野川かさね 文:小林百合子

<プロフィール>

中川たま

中川たま
(なかがわたま)

料理家。神奈川県・逗子で夫と高校生の娘と暮らす。自然食品店勤務後、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て独立。伝統を受け継ぎながら今の暮らしに寄り添い、季節のエッセンスを加えた手仕事の提案を行う。最新刊は2018年2月刊行の『季節の果実をめぐる114の愛で方、食べ方』(日本文化社)。ほか著書多数。

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