三月 いちご

グランエックス12ヶ月
中川たまさん

少しずつ寒さが和らいできたように感じる3月。
私が暮らす海沿いの街でも、ぽかぽかとした
陽だまりを感じる日が増えてきました。

春の足音とともにやってくるのが、いちごです。
冬の間はどうしても柑橘類を食べることが
多くなるのですが
この季節、市場で真っ赤ないちごを見つけると、
ああ、もうすぐ春が来るんだなあ、と思います。

我が家は家族全員、いちごが大好き。
春のいちごは甘くてみずみずしくて、
優しい酸味があって、食卓に出しておくと、
あっという間になくなってしまいます。

そのまま食べてもおいしい春のいちごですが、
私はよく料理にも使います。
ジャムはもちろん、デザートに使うことも多いですし、
酸味と甘さを生かしてサラダやマリネにすることも。

今回は我が家の定番のいちご料理の中から、
春の野菜と合わせた中華風のナムルと
家でも手軽に作れるパイをご紹介します。
おいしいいちごが手に入ったら、ぜひお試しくださいね。

いちごのマリネ
いちごに太白胡麻油を加えてマリネに。オイルが加わるといちごから水分が出て、甘さがぎゅっと凝縮されます。

甘さとほろ苦さが好相性。
いちごの中華風ナムル

この季節、市場やスーパーにたくさん並び始めるいちご。
最近は品種も増えて、食べ比べるのも楽しいものですね。
おなじみの品種で言うと、大粒で鮮やかな赤色が眩しい
「あまおう」は甘くて濃厚。

比べてやや小ぶりで愛らしい姿の「とちおとめ」は
甘さのなかに優しい酸味があって、爽やかな風味です。
私はどちらも好きなのですが、
数年前に地元で「とちおとめ」を作っている
農家さんと知り合ってから、
さらにいちご愛が深くなりました。

娘と一緒にその農園にいちご狩りに行ったときのこと。
経験したことのある方はよくご存知かもしれませんが、
とってすぐに食べるいちごは、格段においしいのです。
農家さんいわく「いちごは鮮度が何より大切」だそうで、
それ以来いちごを買うときは前日に農園にお電話をして、
翌朝、とれたてを買いに行くようにしています。

ウドは薄くスライスして生のまま。せりもたっぷりと使いましょう。爽やかな香りが台所に満ちて、春を感じます。

みずみずしく、心地よい甘酸っぱさのある
とれたていちごはまさに「春の使者」。
ならば、同じく春を告げる野菜と合わせたら、
この季節ならではのひと皿になるのでは。
そんなアイデアから生まれたのが、中華風のナムルです。

そのままでも十分に甘いいちごですが、
少量のはちみつやオイルでマリネすると
酸味が抑えられて、角の取れた、
優しくまあるい風味になります。
我が家ではこのマリネを
ヨーグルトやアイスのトッピングにすることも
多いのですが、野菜と和えてもとてもおいしい。

とくにこの時期なら、ウドやせりなど、
春らしいほろ苦さのある山菜との相性が抜群。
それだけだとクセが強く感じてしまう春の山菜ですが、
いちごの甘さが加わることでマイルドな風味になります。

それでいて、山菜ならではの清々しい香りは健在で、
食卓に春の風を運んでくれるようなお料理に。
いちごの赤と山菜の緑が綺麗で、
食卓が華やぐひと皿です。

いちごと山菜のマリネ
マリネしたときに出るいちごのソースも一緒に和えて、ドレッシングの一部に。いちごの甘さが山菜の風味を引き立てます。

思い立ったときに作れる
お手軽いちごパイ

いちごと言えば、デザートに欠かせない存在ですよね。
私もおいしそうないちごが手に入ると、
やっぱりお菓子を作りたくなってしまいます。

フレッシュなまま、
ケーキなどにトッピングするのもいいですが、
私は熱が入ってトロトロになったいちごの食感や
風味も大好き。
そうなるとジャム作りがしたくなってしまうのですが、
そこまで時間がないときによく作るのが、
いちごのパイです。

パイと聞くと、
なんだか手間がかかりそうだなと思いがちですが、
これはパイ生地を別に焼く必要がないお手軽レシピ。
強力粉と薄力粉を各40グラムずつに全粒粉を20グラム、
そこに塩ひとつまみと無塩バター50グラムを
よく混ぜます。

生地がまとまったら綿棒で伸ばし、
何度か折り畳めば生地は完成。
薄く伸ばした生地にフォークで穴を開け、
スライスしたいちご10粒くらいを並べていきます。
いちごがこぼれないよう生地の両端を内側に折り畳んで、
お好みできび砂糖をふりかけたら、
200度のオーブンで20分ほど焼くだけです。

いちごパイ
いちごをたっぷり並べたら、生地の両端を折り返して成形。甘酸っぱさを楽しみたかったので、今回はとちおとめで。

いちごの表面がとろりとして、
生地に少し焦げ目ができるのがおいしい頃合い。
バターの層がサクサクしたパイとは違って、
どこかクッキーのようなホロホロ、
ザクザクとした食感の生地は
家庭だからこその素朴さがあって、ほっとする味です。

何より、焼きたてのパイをすぐに食べられるというのは、
家庭で作るお菓子ならではの幸せです。
熱々にバニラアイスを添えて食べても
とてもおいしいです。

そうそう、このパイ生地、
砂糖を使わず甘さ控えめなので、
ピザ生地感覚で玉ねぎやチーズを乗せて焼くのも
おすすめ。季節ごとに旬のフルーツを使って、
ぜひいろいろなトッピングも試してみてください。

とちおとめのいちごパイ
ジャムのような香りが漂う、幸せの熱々パイ。ナイフとフォークで 食べるのもいいですが、待ちきれず手でつまんで食べてしまいます。

いちごのナムルはこんなふうに

[材料]

(2人分)
いちご
10粒
ウド
小さめ1本
せり(食べやすい大きさに切ったもの)
ひとつかみ
生姜のすりおろし
小さじ1/3分
太白胡麻油
大さじ1
米酢
小さじ1
塩、胡椒
各少々

[作り方]

  1. ウドは5㎝幅に切って皮をむき、薄切りにしてから酢水(分量外)に5分ほどさらす。いちごはへたをとり半分に切る。
  2. ボウルにいちご、生姜のすりおろし、太白胡麻油、米酢、塩を入れて和える。
  3. いちごから水分が少し出てきたら、水気をきったウド、せりを加えてさっと和える。お好みで胡椒をふる。

せりはみつばやクレソンで代用してもおいしいです。

料理/中川たま 撮影/野川かさね 文/小林百合子

<プロフィール>

中川たま

中川たま
(なかがわたま)

料理家。神奈川県・逗子で夫と高校生の娘と暮らす。自然食品店勤務後、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て独立。伝統を受け継ぎながら今の暮らしに寄り添い、季節のエッセンスを加えた手仕事の提案を行う。最新刊は2018年10月刊行の『デイリーストック 朝、昼、晩 日々の料理の味方』(グラフィック社)。ほか著書多数。

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