わたしの台所
川津幸子さん

第2話
好きな道具で、料理上手に

料理好きなあの人の、ふだんの台所を見せていただく連載。
料理研究家、川津幸子さんの自宅を訪ねて、
台所と日々の暮らしについて伺っています。
「いい道具を持つことは、料理上手への近道」という川津さん。
段取りよくおいしいものを作るコツを交えながら、
愛用の道具について教えていただきました。

川津幸子さんの「台所」2話

ボウル&スケッパーで、手際よく

料理は手際よく進めたいもの。そこで役立つのがボウルとスケッパーです。川津さんは、白色の小さなプラスチックボウルをたくさん用意しておき、切った食材はどんどんその中に入れていきます。

「まな板をいつでも広く使えて、ストレスなく切りものができます。ボウルに素材を分けて入れておけば、鍋に加えていくのもスムーズ。洗い物が増える……、と考えがちだけど、軽くて小さいボウルなら洗うのも一瞬。効率的なんです」

切ったものをボウルに移すときは、スケッパーを愛用。製菓などで使う道具ですが、食材をさっと集めてすくう機能は、ふだんの調理でも重宝します。包丁で恐る恐るやっていた作業が、こぼさずひとすくいでできる気持ちよさ。小さなことですが、調理がリズミカルに進みます。

ボウル&スケッパー

計量すれば、味がピシッと決まる

調味料を計るのが面倒だからと、適当に入れたら、「ん?少ないかな」「入れすぎたかも」と何度も味見をして、時間がかかったという経験は、きっと誰しもあるのではないでしょうか。

「急いでいるときこそ、私は計量することをおすすめしています。きちんと計れば、最初から味のストライクゾーンに入るので、あとは多少の調整でいい。急がば回れというように、その方が結果として早いんです。私自身も、いつも計量しているんですよ」

何より、計量スプーンそのものが好きだという川津さん。台所のすぐ手の届く場所に数本を置いておくほかに、引き出しには、海外で見つけると「つい買ってしまう」というユニークな形や分量のものがコレクションされていました。

軽量スプーン

また、分量だけでなく、調味料の見極めも肝心だと言います。

「料理をおいしく作るために、誰でもすぐできるのが、質のいい調味料を使うことだと思います。たとえば伝統的な製法で手間をかけて造られた醤油は、のばしたときの味の深みが違います。料理を簡単に、一段おいしくしてくれるから調味料選びは大切。毎日使うものなので、気軽に手に入る範囲で選び、新鮮なうちに使いきるといいですよ」

調味料の見極めも肝心

いい鍋が、気分を上げてくれる

日々使う鍋は、アメリカの「オール・クラッド」というメーカーのもの。これだと惚れ込み、シリーズで揃えて使っています。

「使いはじめてもう20年。私がこよなく愛している鍋です。ステンレスの3重構造で厚みがあり、熱伝導がいいので、お肉も上手に焼けますし、味噌汁から煮物までなんでもこれで作れます。日本の行平鍋のような丸みのある形もきれいでしょう。焦がしても磨けばきれいになるし、本当に丈夫なんです」

日本では取り扱いが少ないため、アメリカに行くたびに買っては持ち帰り、「ツバメの巣作りように、少しずつ集めました」と笑います。汚れが落ちやすく、クレンザーと金だわしでこすれば、ぴかぴかになって気分もすっきり。シンプルでかっこいい佇まいと優れた機能性で、台所仕事の気分を上げてくれる存在です。

日々使う鍋

料理がどんどん広がる、中華せいろ

シュンシュンと湯気を出し、食材をふっくら蒸し上げてくれる中華せいろは、冬に限らず重宝する道具。竹の皮を編んだふたからほどよく蒸気を逃し、水滴が料理に落ちないという優れた造りで、「蒸す」が身近になる、頼もしいアイテムです。

「中華風に味付けしたひき肉ダネをどーんと蒸したり、スペアリブの豆豉蒸しや、大きな茶碗蒸しもよく作ります。魚を酒蒸しにしたりと、中華だけでなく和食にも使えますしね。ふかし芋など、野菜も蒸すと、うまみや栄養を逃さずとてもおいしいんですよ」

熱々を演出できるせいろは、ごはん会でも活躍。大ぶりな器が入れられて使いやすい、直径27㎝を愛用しています。

中華せいろ

グリルパンでシェフ気分

熱々の鉄板の上で肉がジューッと焼ける音。ひっくり返せば、こんがりと香ばしい焼き目。視覚、聴覚、嗅覚と、五感を働かせながら、レストランさながらの一品が作れるのが、グリルパンです。

「グリルパンの良さは、フランス料理を学んだ調理師学校で知りました。香ばしい焼き目がうまみとなり、肉や野菜をただ焼くだけで、ちょっと洒落たごちそうが作れる。なんていい道具なんだろうって。コツは、最初にしっかり熱してから焼くこと。そうすれば、魚の皮もくっつきません」

豚肉を、塩、こしょう、レモン汁とハーブミックスでマリネしたら、熱したグリルパンへ。焼きはじめたら、触らずに、両面にしっかり焼き目をつけるのがポイント。縞模様の焼き目がなんとも食欲をそそる一皿ができ上がります。

グリルパン

旅先でも、台所用品の店を見つけたら、「宝の山を見つけたようにワクワクしちゃいます」と笑って語ってくれた川津さん。仕事柄、いろいろなものを持っているけれど、「これは本当にいいですよ」というおすすめのものを今回は教えていただきました。

「たとえば、中華せいろをひとつ持つことで、蒸し料理がいろいろ作れるようになって、家で楽しめる中華や和食のおいしいものが増える。道具が、自分で作れるものを広げてくれるんですね。

置く場所のこともあるので、たくさんはいりませんが、こういう料理が作れるようになれたらいいな、この道具はいいなと思ったら、いいものを買って、大事に使って、料理を作ってみること。道具の力を借りることは、料理上手になる近道だと思います」

使っては洗いを繰り返し、「おいしい」をともに作り上げてきた道具たち。台所のいつもの定位置にすっぽりと収まっている姿は、どこか誇らしげで、頼れるベテランの風情を漂わせていました。

いい道具が、料理を楽しくする

こぼれ話を少し

思い出のグリルパン

思い出のグリルパン

私が初めて持ったグリルパンは手前のもので、上京するときに母が送ってくれたものでした。フライパンではなくグリルパンというのが、ちょっと洒落ていますよね。大学生だったので、「これってなんだろう?」と最初は不思議でしたが、そのうちに良さがわかってきて、これを使うだけでおいしそうに焼けるので、うれしくなって。以来、グリルパンとは長い付き合い。いい味になっていますが、まだまだ現役です。

写真:西希 文:加藤奈津子

<プロフィール>

川津幸子川津幸子

川津幸子(かわつゆきこ)

出版社を経てフリーの料理編集者に。『ごちそうさまが、ききたくて。』(栗原はるみ著)などのヒット作を手がける。その後、フランス料理を基礎から学び、料理研究家に。作りやすくておいしい料理を、和洋中、幅広いジャンルで提案する。著書に『100文字レシピ』シリーズ、『川津さんちのおうちごはんのレシピとヒント204』(オレンジページ)など

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