四月 夏みかん

グランエックス12ヶ月
中川たまさん

暖かい日と肌寒い日が交互に訪れる春先。
冬への名残惜しさと春への希望が
入り混じる季節になりました。

私が暮らす街では、庭に大きな木のある家が多く、
この時期、たわわに実をつける夏みかんが目立ちます。
残念ながら私の家には梅の木しかないのですが、
嬉しいことに、たくさん採れた夏みかんを抱えて、
「おすそ分け」と、家を訪ねてくれる友人がいます。

皮が厚くて、むくのに少し骨が折れますが、
その果肉は甘くてジューシーで、とてもおいしい。
家族はそのままパクパクと食べてしまうのですが、
私が楽しみにしているのはその皮で、
少し苦さのある皮と甘い果肉を使って、
マーマレードを作ることがこの時期のお決まりです。

丁寧にアクを取り、コトコトと煮込んだマーマレードは
澄んだオレンジ色でとても綺麗。
甘さとほろ苦さがちょうどいい塩梅で、
サラダに加えたり、サンドウィッチの具にしたりすると、
大人っぽくて上品な風味を加えてくれます。

夏みかんの特徴
「夏みかん」という名前だけれど、旬は4〜5月。甘夏と混同しがちですが、夏みかんの方がやや大きく、皮がザラザラ、でこぼこしているのが特徴です。

春の訪れを告げる
夏みかんのマーマレード

ご近所さんからおすそ分けでたくさんいただいた「夏みかん」。綺麗な橙色の実が台所にあると、春が来たんだなと実感します。
家族がひとしきり食べてしまったら、あとは私のもの。
この季節、いつも楽しみにしているマーマレードを作ります。

マーマレードは柑橘類のジャムの総称ですが、
オレンジやレモンなどがきっと馴染み深いかと思います。
旬の夏みかんを使ったマーマレードは、甘さの奥に
皮のほろ苦さがあって、酸っぱさは控えめ。

オイルと一緒に野菜に和えてドレッシング代わりにしてみたり、アイスやヨーグルトにかけて食べたりしても美味しいですし、スペアリブのように甘さと少しの酸味、照りを出したいときは、ソースに少し加えて使っても、とても美味しく仕上がります。

作り方のポイントは、
とにかく皮のアクを丁寧に取ること。
アクが残っていると苦みや雑味が際立ってしまいますし、
何より、本来とても美しい橙色が濁ってしまいます。

皮のアクをとる
さっと煮た夏みかんの皮を水にさらします。この工程を2〜3回繰り返すうちに、アクが抜けて皮の透明度が増してきます。

澄んだ色と味のマーマレードを作るコツは、
最初に皮の部分だけを煮て、その後しばらく水にさらし、
また煮て、水にさらすという工程を丁寧に行うこと。
そうするとしっかりとアクを取り除けて、
皮が持つ心地いいほろ苦さだけを残せるんです。

皮のアクが抜けたら、
あとは果肉と砂糖を加えて煮るだけ。
旬の夏みかんはとても甘いので、少し酸味が欲しい時は
仕上げにレモン汁を加えて、好みの味に調整しましょう。

こうしてマーマレードを手作りしていると、毎年少しずつ
夏みかんの甘みや酸味が違うことに気がつきます。
家のすぐそばで毎年実をつける果物から、季節の移ろいや
年ごとの変化を感じられるのは贅沢なこと。
今年はどんな春にしようか。
ワクワクした気持ちが湧いてきます。

マーマレード
熱湯消毒した瓶に入れれば2週間ほど保存可能。小瓶に分けて、今度は私からご近所さんへおすそ分けすることも。

手作りのマーマレードで
春らしいデザートを

たっぷり作った夏みかんのマーマレード。
今年も甘さとほろ苦さがいい塩梅に仕上がりました。
使い道はたくさんあって、娘が好きなのはこれを炭酸水で割ったマーマレードソーダ。シンプルですが、これがおいしいんです。

味のおいしさはもちろんですが、私が好きなのはその色。
鮮やかで元気が出るような橙色は、
お料理に少し使うと全体がパッと明るくなって、
春のおもてなしにぴったりです。

定番は、新玉ねぎとイタリアンパセリをマーマレードで和え、そのマリネとハムをカンパーニュにのせたオープンサンド。
仕上げに塩と胡椒、少しのオリーブオイルを回しかけると、夏みかんの爽やかな香りとほろ苦さがアクセントになって、とても清々しい風味に。
マリネの隠し味に粒マスタードを入れると白ワインによく合う、より大人っぽいひと皿になります。

オープンサンド
カンパーニュはカリッと焼いて。新玉ねぎの甘さとマーマレードのほろ苦さがちょうどいいバランスです。

甘党の人には、マスカルポーネチーズとマーマレードを混ぜ、ふわふわの食パンで挟んだサンドウィッチを。
ふつうフルーツサンドには生クリームを使いますが、
マスカルポーネチーズに代えると、甘さを控えつつも、
コクのある味わいに仕上げることができます。

ここに夏みかんの果肉を少し加えると
フレッシュさとジューシーさが加わって、
よりフルーツサンドに近い感覚に。
朝食に食べても、緑が綺麗な場所でピクニック感覚で食べても
とても気持ちがいいんです。

どちらのサンドも、マーマレードの橙色が差し色になって、見た目にも明るく、春らしい佇まい。
心地いいほろ苦さを味わいながら食べると、正式に春が来たことをしみじみと感じられるはずです。

フルーツサンド
マスカルポーネチーズにマーマレードをたっぷり混ぜて。白と橙色のコントラストが美しい、春らしいフルーツサンドです。

夏みかんのマーマレードはこんなふうに

[材料]

(作りやすい分量)
夏みかん
1ケ(300g)
砂糖
90g(夏みかんの重量の30%)
レモン果汁
少々
マーマレードはこんなふうに

[作り方]

  1. 夏みかんを4等分にし、皮をむく。皮を縦2等分にし、横にして薄切りにする。みかんの実は薄皮を向いて種をとる。
  2. 鍋に皮とたっぷりの水を入れ中火にかける。沸いたら火を弱め10分煮る。水にさらして30分ほどおいたら水気を切り、再び鍋にたっぷりの水を入れ中火にかける。沸いたら火を弱め10分煮て、水にさらして30分ほどおく。
  3. やわらかくなって(少し食べてみるといいでしょう)、アクがなければ水気を切り、鍋に夏みかんの果肉と砂糖を入れて汁気が少なくなるまで煮込む。味見をして酸味が足りなければ、レモン果汁を加えて再び煮る。

消毒した保存容器に入れて2週間ほど保存可能。

料理/中川たま 撮影/野川かさね 文/小林百合子

<プロフィール>

中川たま

中川たま
(なかがわたま)

料理家。神奈川県・逗子で夫と高校生の娘と暮らす。自然食品店勤務後、ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て独立。伝統を受け継ぎながら今の暮らしに寄り添い、季節のエッセンスを加えた手仕事の提案を行う。最新刊は2018年10月刊行の『デイリーストック 朝、昼、晩 日々の料理の味方』(グラフィック社)。ほか著書多数。

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